デッサンとは
デッサンとはフランス語で、日本では 素描(そびょう、すがき)と言い、
英語ではドローイングと言います。
その役割は、対象の形や明暗などを平面に描くことです。
デッサンは通常モノトーンの表現で、一般に、ペン、鉛筆、木炭、パステル、コンテなどが用いられ、輪郭線によって対象の特徴をつかむことが目的となります。
中世ヨーロッパのルネサンス時代*¹には、絵画や彫刻、建築の試作方法として大いに用いられるようになりました。


版画や日本画など日本のデッサンや古代西洋の絵画は"線的"ですが、近代以降、西洋のデッサンは"面的"に描かれ、輪郭線よりも明暗の表現が尊重されていきます。
輪郭を強調すれば、線的表現=二次元に近づく(漫画、木版画など)。
明暗を強調すれば、面的表現=三次元に近づく(具象・写実画など)。
デッサンは下描きとしてではなく、描画の基礎的な訓練としての役割も果たします。
デッサンの対照になるものは絵具で面を塗る ペインティングになります。
(デッサン・ドローイング ⇔ ペインティング)
*¹ルネサンス時代=14~16世紀、イタリアから始まって西ヨーロッパで展開された文化や芸術の運動
デッサンで最も使われる画材
現在デッサンに使われる素材で最も一般的なものとして「鉛筆」がありますが、これは黒鉛と粘土を混ぜたものです。
黒鉛が少なくて粘土が多いと芯が固くなるのでHARD(ハード:かたい)の略字で鉛筆の数字にHがつき、黒鉛が多くて粘土が少ないと芯の色が黒くなるのでBLACK(ブラック:黒い)の略字でえんぴつの数字にBがついたものになります。
HとBの中間で”F”FIRM(引き締まった)というのもあります。
9H~H < F < HB < B~9B (薄い→濃い)

お勧めの鉛筆
私がデッサンで最もお勧めする鉛筆は定番のドイツ社製の「ステッドラー」です。
硬度の種類は24硬度*(12B、11B、10B、9B、8B、7B、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、9H、10H)。
日本のユニスターなどの鉛筆とくらべて固いので細かい描画がし易いという特徴があります。私もデッサンで使う鉛筆はドイツのメーカーのステッドラーのみです。
*メーカーによって種類は違います。

ステッドラーの鉛筆
個人的にデッサンに最適な鉛筆の削り方
鉛筆デッサンは細い線の集積で対象を描くため、描画に変化を与えるには線の太さを変えるのが手っ取り早いです。
そのためみ下図のように削ります。

←芯を長めに出す
軸木の部分を大きく削り、芯を長めに残します。
そうすることで、鉛筆を寝かせて線を引けば太い線が描けます。それに対して、鉛筆を立てて線を引けば細い線が描けます。
これらを組み合わせて対象の質感や描画の表現に変化を持たせます。
この削り方で注意することは、
濃度の高い(2B以上)の鉛筆は芯がもろく折れやすいので、この削り方はしません。

←鉛筆を寝かせて描く

↑鉛筆を立てて描く
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鉛筆の歴史
1560年代 イギリスのボロ-デール鉱山で良質の黒鉛が発見され、半ば原始的に筆記具として使っていました。
1565年頃 スイス人の博物学者コンラート・ゲスナーは、丸い筒状の木や金属の先端に黒鉛の小さな塊を詰めたものを筆記具として使いました。
1662年頃 ドイツでフリードリヒ・ステッドラーが鉛筆を世界で初めて製造しました
1760年頃 ボロ-デール鉱山の黒鉛を堀りつくされたため、ドイツ人のカスパー・ファーバーが黒鉛に硫黄を混ぜた固めた芯を作りました。しかし書き心地は良くありませんでした。
1795年 フランス人のニコラス・ジャック・コンテが硫黄の代わりに粘土を黒鉛と混ぜ、これを焼き固めて芯を作ることに成功し、さらに芯の濃度に変化も与えました。現在でも基本的には、このコンテの方法で鉛筆の芯は作られています。
1853年 J.S.ステッドラーがドイツに工場を設立(ステッドラー社)します。

黒鉛

世界初の鉛筆製造

ステッドラー社
鉛筆の生成法
①粉末の黒鉛と粘土を水で練り合わせて乾燥
②約1,000度で焼成して芯を作る。
③芯に油脂や樹脂を浸透させて、柔軟性と共に光沢をもたせる。
④芯を軸木で挟み製品化する。
鉛筆の特徴
鉛筆は、他の素材と比べると硬く、透き通るような黒の発色が特徴です。
また豊富な種類があり、その数だけ色(黒色)があり、質感も変わる。
繊細で柔らかい表情から、力強い硬質な表情まで、重層的で奥行きに富む表現が可能です。
身近で一般的でありながら、表現の幅も奥が深く、多様性に富む素材です。